年内 帰島に道筋 繁殖経営再建「気力湧く」 口永良部島噴火から半年

 鹿児島県口永良部島の新岳の噴火から、29日で半年を迎える。火山活動は収まり、避難生活を続ける島民にも、年内の完全帰島という道筋が見え始めた。和牛繁殖農家は再建に決意を強める。しかし、荒れた家屋や学校、水道、電気の復旧など、島での生活を取り戻すには住環境整備という課題が重くのしかかっている。 

 新岳が噴火した5月から、住民137人全員が島の外で避難生活を送る。内115人は隣の屋久島で、仮設住宅や親戚など知人宅に身を寄せている。火山活動の警戒レベルは「5」のままだが、10月に避難指示区域が全島から、火口の2.5キロ以内に変更になった。屋久島町は年内を完全帰島の目標とし、避難区域内の住人は、空き家の利用などを検討する。

 火山の様子を見ながら一時帰島を繰り返し、島民は家の管理、町や電力会社はインフラ整備に取り組む。特に島内に4戸あった繁殖和牛農家は、数少ないチャンスを生かして牛の世話をしてきた。9月には町やJA種子屋久が協力し、育成牛を搬出できたこともあり、経営を続ける意欲を維持できた。

 繁殖和牛5頭を飼う山田光さん(77)は「生き物を扱う仕事ならではの、言い尽くせないつらさがずっと心にあった」と声を震わせる。「帰れる日が見えてきたのはありがたい。島でまた生活するんだという気力が湧いた」と喜ぶ。
・住環境の整備 課題
課題は多い。半年間で傷んだ住宅を整備し、水道、電気、ガスを復旧しなければならない。小・中学校や商店などの再開も欠かせない。
 同JAの購買店舗は、同島本村区の周辺で唯一の店舗だった。停電で食品関係は全てなくなったが、12月14日までに再開の用意を整えることを決定。完全帰島が決まり次第、生鮮品も並ぶという。JA屋久島支所の益田達矢支所長は「帰島の意志を奮い立たせるためにも重要な拠点になる。また生活を支える店舗として役立ちたい」と意気込む。
 半年を超える避難生活だが、全国からの支援が届いたことが住民の支えになった。25日までに義援金約9500万円が寄せられた。米はJA全農が送った500キロを含む2トン以上が届き、長野県からはレタス、青森県からはリンゴなども到着した。他にも企業、個人から電化製品や生活用品などが届いた。
 同島本村区長の水野靖弘さん(69)は「感謝の気持ちは言い尽くせない。まだまだ課題も多いが、全島民そろって、必ず帰る」と言い切る。それが全国からの支援への恩返しであり、島民の共通の思いだ。