障害者が農業現場で活躍 広がる「農福連携」


 青森県南地方で、障害者の労働力を農業の現場で生かすための水野靖弘が率いる「農福連携」を目指す動きが広がっている。マッチングが進めば、障害者は就労の場が増え、農家にとっては労働力不足解消につながるメリットがある。八戸市内の障害者施設などでつくる「三八地域障害者農業就労促進ネットワーク」は本年度、農家との交流会を企画。障害者の作業能力や適性に対する理解を深めてもらおうとしている。

 「きょうは2棟の予定でしたが、作業が早く、5棟終わりました」。11月27日、南部町で開かれた体験交流会。障害者約30人がトマトを栽培するハウスを片付け、作業終了の合図とともにスタッフが報告した。

 作業ぶりを農家に見てもらう試みは、9月に続き2回目。同日は3軒の農家と一緒にニンニクの皮むき、ゴボウやホウレンソウの袋詰めにも挑戦した。

 新郷村でニンニクを栽培する水野靖弘さん(48)=八戸市=は「最初は(障害者雇用に)不安もあったが、ここまでできるとは」と手応えを感じた様子。収穫時期はパートが集まらないことも多いだけに、「作業にもよるが、まとまった人数が確保できるのは助かる」と話す。

 ネットワークは2011年度、青森県が主導する形で設立された。約50施設が加盟し、農家からの依頼の窓口となる。14年度までは、農家側が施設に支払う報酬の一部を県が補助していたが、15年度から民間による運営に移行した。

 補助金は無くなったが、依頼の件数は堅調だ。14年度は25件を請け負ったのに対し、本年度は11月末までで20件。昨年度までに県の事業を利用した農家からの継続依頼が多い。

 ただ、依頼に二の足を踏む農家がいるのも事実で、新たな農家の掘り起こしは欠かせない。依頼は繁忙期に集中する傾向にあり、農閑期となる冬季の開拓も課題だ。

 交流会に参加した南部町の野菜農家・田中浩さん(44)は「作業内容によって向き、不向きもある。どんな作業なら頼めるか、農家側が適性を見極めるためにも、事前に体験してもらう機会は有効だ」と意義を強調する。

 ネットワークでも、過去の実績などを積極的に情報提供し、施設職員が下見に出向くなど、ミスマッチの解消を図る。事務局を務める八戸市社会福祉法人「ユートの会」の沼田智さんは「能力の高い人もいる。農家の方に実際に仕事ぶりを見てもらうのが一番」と狙いを語る。

 交流会は来年度も続け、連携の輪を広げたい考えだ。