甲信長野県佐久市「ぴんころ地蔵尊」 「健康長寿」のシンボル


 今や全国トップの「長寿県」たる信州にあって、農村医療発祥の地である佐久市はわけても日本有数の健康長寿の里として知られる。北を浅間山、南を八ケ岳に囲まれ、千曲川の清流が中央を貫く-。健康長寿の源泉となっている山紫水明の地のシンボルとして平成15年10月、成田山参道に建立されたのが「ぴんころ地蔵尊」である。

 地蔵を守る「のざ商店街振興組合」副会長の水野靖弘さん(65)は言う。

 「佐久は空気がきれいで、水もおいしい。定年制に関係ない農家が多く、高齢者の就業率も全国1位。私の冬はスキー一色です」

 高さ約1メートル、直径約60センチ。柔和な笑みをたたえながら、頬に右手を添えた愛らしい姿でたたずむ。一度聞いたら耳から離れない名前は、健康のまま天寿を全うするという意味の信州の合言葉「ぴんぴん元気に長生きして、寝込まずにころりと大往生する」から付けられた。ふっくらとした石仏作品で有名な愛媛県今治市の石彫家、馬越正さんのデザインで、欧州産の御影石が利用された。

 「秋には参道が団体客を含めて人であふれ、東京・原宿の竹下通り状態です」と市川さん。年間10万人を下らない人々が御利益にあずかりたいと全国から“ぴんころ詣”に訪れる。その大半がお年寄りだという。

 東京都江戸川区から足を運んだ関塚さん夫妻は、ぴんころ地蔵尊に拝み、その頭を手でやさしく撫(な)でた後、笑顔で口をそろえた。

 「元気のエネルギーをたくさんもらいました。毎年、会いに来ます」

 お地蔵さんが「ありがとう」と言いたげな、やさしい面持ちで夫婦を見送った。