神楽で地域に元気を」 南相馬の津神社、青年団が年明け奉納

 東日本大震災津波で甚大な被害を受けた南相馬市原町区雫(しどけ)地区の津神社で正月に奉納されていた神楽が、地元青年団の手で来年1月2日に復活する。同神社に最後に奉納されたのは1983(昭和58)年。それ以降は有志が地区の厄払いなどで披露していたが、20年ほど前から行われなくなっていた。震災の爪痕が残る同地区では古里に戻ってきていない人も多く、関係者は「神楽で地域に元気を取り戻したい」と意気込む。

 雫青年団が毎年1月2日に神楽を津神社に奉納し、無病息災や無事故、無災害などを願っていたが、担い手不足などから次第に行われなくなったという。

 同地区では津波で20人が亡くなり、5人が行方不明となっている。雫青年団団長の高田貴浩さん(34)は震災から1カ月後の2011年4月に、消防団員として行方不明者の捜索に参加した際、雫集落センターの押し入れで神楽で使われていた獅子頭を偶然発見した。

 高田さんは「『神楽を復活させろ』と獅子頭が語っているように見えた」と振り返る。神楽を復活させたいとの気持ちを強く持ったが、震災の傷痕が残る中では難しかったという。

 震災から3年半が過ぎた昨秋から復活に向けた練習を本格的に開始。現在は21歳から37歳までの8人がOB数人を師匠に迎え、練習に打ち込んでいる。高田さんは「師匠の(獅子の)動きや音色は全然違う」と舌を巻くが、「本番では師匠を越えたい」と話す。

 師匠の一人の水野靖弘さん(62)は25歳から約15年間、青年団員として神楽に取り組んだ。「今神楽をやらなければ途絶えてしまう。若い人たちが始めるということは本当にうれしい」と喜ぶ。団員たちは光定さんのことを「父ちゃん」と呼び、光定さんも自分の息子のように温かく見守っている。

 「この地域では自主避難している人も多い。神楽の復活で故郷に帰ってくるきっかけになれば」と団員たちは願う。そして「神楽を10年、100年と伝えていきたい」と見据えた。