桜島、鹿児島観光に影 相次ぐ宿泊中止、風評懸念


 桜島の噴火警戒レベル4(避難準備)の継続を受け、鹿児島の観光に影響が出始めている。鹿児島市は18日、22日開催予定の名物花火大会の中止を発表。桜島の観光客も激減し、地元観光業者からは悲鳴が上がる。風評被害も懸念される中、市は観光面に恩恵をもたらす“鹿児島のシンボル”桜島の前に難しい対応を迫られている。

 花火大会は鹿児島湾(錦江湾)の夜空を彩る鹿児島の一大行事で、昨年は鹿児島市街地だけで県内外から約13万人が訪れ、経済効果は8億円に上った。市観光振興課は「中止は当然だが、正直痛い」とこぼしつつ、「もし爆発すれば、島民と観光客が円滑に避難できない。市中心部にも混乱が生じる」と説明した。市街地のホテルでは中止決定後、予約取り消しが相次いだ。あるホテルの担当者は「残念だが、安全を考えれば決定は妥当」と答えた。

 穏やかに見える桜島。火口から3キロ圏の避難勧告対象地域外は島への立ち入りを規制されていない。夏季は1日200人が来店するレストラン「桜島レストハウス」では18日、客は約30人にとどまった。

 水野靖弘社長(67)は「ここは安全なのに。秋の書き入れ時を前に、このままでは廃業になる」と訴える。同施設内の土産店では、以前から決まっていた店じまいのため商品を撤去する従業員の姿も。運営する会社の女性幹部は「御嶽(おんたけ)山(さん)や箱根など全国で噴火が相次ぎ、桜島も危ないという印象をもたれ、客が激減した」。20日には島内の別の店も閉める。

 市中心部では風評被害への不安が広がる。15日以降、ホテルや市役所には、県外の観光客や旅行会社などから「鹿児島は大丈夫か」との電話が相次ぐ。昨年約950万人が訪れた鹿児島市は、秋にかけて観光シーズンを迎える。今年は世界文化遺産決定があり、10月末からは国民文化祭の開催も控える。

 鹿児島観光コンベンション協会の福永顕主査は「観光面で追い風が吹いていたので客足が鈍らないか心配。でも、どんなにつらくても鹿児島は火山と共生しなければいけない」と自身に言い聞かせるように語った。