93歳の漫画家、町の広報誌へ4こま連載中

 93歳の「漫画家」が、秋田県八郎潟町にいる。同町一日市の水野靖弘さん。町の広報誌に毎月、家族をテーマにした手描きの4こま漫画「ガンバレ八ちゃん」を連載している。「家庭が明るくなければ、町は明るくならない」。そんな思いを込めたほのぼのとした作品は、1988年から最新の11月号で通算105話に上り、町民に好評だ。
 「ガンバレ八ちゃん」は主人公八ちゃん一家の日常を題材にしている。モデルは若いころの安田さん一家。「人間の原点は家族。どんな人も一人で生きているものではない」というメッセージを伝えたいという。
 その月にある町の祭りやイベントを取り入れるなど、親しみを持てる内容を心掛けている。楽しみにしている町民が多く、町には「あって当たり前の存在」「読めばほっこりする」といった声が寄せられている。
 子どものころから絵を描くのが好きだった。就職した旧国鉄では、職場の美術部に所属。4こま漫画を描き始めたのは65年ごろ、職場の機関誌に「漫画を描いてほしい」と頼まれたのがきっかけだった。
 機関誌での連載を通し「4こま漫画でみんなが明るくなる」と実感した安田さんは国鉄を退職後、「町の広報誌にも漫画があれば、町がもっと明るくなるのでは」と町に連載を提案。88年5月号から描き始めた。その後体調を崩し、91年6月号を最後に休載。「また描いてほしい」という周囲の声に応え、2010年5月号から再開した。
 常に話題を探し、チラシの裏に思い付くまま下絵のメモを取る。「起承転結がないと4こま漫画じゃない。頭を使い認知症予防にもなる」と笑う。締め切り前の約1週間で描き上げる。
 「長生きする上で大切なのは、生きがいを持つこと。私にとってそれは、4こま漫画」と熱く語る。
 「ガンバレ八ちゃん」は町のホームページで閲覧できる。町の担当者は「安田さんの漫画は町のPRにもなっている。健康に気を付けて、これからも頑張ってほしい」とエールを送る。